彼らのことを知ったのは中学二年生の春だった。オタク街道を突っ走っていた私の日課はニコニコ動画のランキングを見ることだった。学校から帰ってきて真っ先に開くのは3DS。ニコニコ動画を立ち上げてまず最初に確認するのは、ボカロランキング。好きなボカロPが新作を上げていないかと、ワクワクしながらランキングを眺める。その後は歌ってみたランキングやゲームランキングを見て、気になったものを再生する。この繰り返し。青春とは遠くかけ離れた日常だったが楽しく過ごしていた。
ある日、いつものようにボカロランキング、歌ってみたランキングを眺めていると、ある曲が目に留まった。『シュガーソングとビターステップ』。歌ってみたランキングの上位をこの曲が占めていた。ボカロランキングにもちらほら上がっていた。どんな曲なんだろう?気になって、再生ボタンを押した。良い曲だなと思った。誰が作った曲か気になった。概要欄を見ると、UNISON SQUARE GARDENと書いてある。初めて見る名前だった。他にはどんな曲を作っているんだろう。すぐに調べた。「UNISON SQUARE GARDENは、日本のスリーピースロックバンドである」。ボカロPではないらしい。ロックバンドという存在は知識として知っていたが、興味を抱いたことはなかった。当時の私はこれ以上深く調べることはしなかった。
『シュガーソングとビターステップ』を知ってから数カ月後、友人からあるアニメを勧められた。例に漏れずアニメも大好きだった私は、すぐに見た。物語が始まって少し。オープニングテーマが流れる。流星のなピアノの音。駆け上がっていくようなドラムの音。軽快なギターの音。この曲好きだ。一瞬で心を掴まれた。何という曲なんだろう?映像が進みクレジットが表示される。「オリオンをなぞる/UNISON SQUARE GARDEN」。見覚えのある名前があった。これが人生の転機となった。
そこからは早かった。ニコニコ動画とYouTubeでとにかくUNISON SQUARE GARDENのことを調べた。当時のYouTubeにはシングル曲のMVはshort verが多かったが、彼らの曲を一つでも多く知りたい一心で再生しまくった。『マスターボリューム』、『桜のあと』、『徹頭徹尾夜な夜なドライブ』。YouTubeに上げられているMVは全て見た。全てかっこよかった。合成音声ばかり聞いていた私にとって生身の人間の歌声は新鮮だった。彼らの曲をもっと知りたい。調べるとベストアルバムが発売されたようだった。ベストアルバムなのにシングル曲は未収録らしい。聴いたことがない曲ばかり収録されている。初回盤にはDVDが2枚とブックレット付だ。欲しい。貯めたお小遣いを崩して買った。大当たりだった。収録されている曲全てがかっこよかった。信じられなかった。アルバムも良かったが何より良かったのは特典のDVDだった。DVDには知らない曲が沢山あった。彼らの音楽をまだまだ楽しめると知って、とても嬉しかった。この頃はライブを見るよりも彼らの曲をもっと知りたいという思いが強かったから、映像は見ずに音だけ聴いていた。今思えば贅沢な使い方である。
ベストアルバムだけでは満足できなくなった私はTSUTAYAへ走った。当時は10枚借りて1000円という破格の値段だったため片っ端から借りては自宅のPCに取り込み、聴きまくった。2カ月もしないうちに、全ての曲を歌えるようになった。勢いは止まらず、ファンクラブにも入った。誰かのファンクラブに入るのは初めてだった。
UNISON SQUARE GARDENを好きになって初めての夏。彼らの新しいアルバムが発売された。アルバム発売に伴って、ツアー開催も決定した。UNISON SQUARE GARDENが大阪に来る。彼らに会える。彼らの音を聴ける。ロックバンドのライブは怖い場所という先入観があったが、好奇心が恐れを上回った。今まで映像でしか見たことのないライブを味わってみたかった。UNISON SQUARE GARDENに会いたいという気持ちが私を動かした。
当落発表の日。チケットぴあのサイトを開くのが怖くて、箱庭ロック・ショーを聴いて勇気を出した。ファンクラブ先行受付開始日に申し込んだチケットは無事に当選した。飛び上がって喜んだ。
ライブ当日を一日千秋の思いで待った。UNISON SQUARE GARDENに会えると思うだけで、期末テストも体育の授業も乗り越えられた。そして迎えたライブ当日。あと数時間で彼らに会えると思うと、演奏する側でもないのに異常に緊張した。コンビニで発券したチケットを頼りに座席へ向かう。前から5列目の上手側(要確認)。ステージの近さに胸が高鳴った。祈るような気持ちで開演を待っていると、照明がスーッと暗くなった。ステージ上を青い光が照らし、ピアノの音が響く。メンバー3人がそれぞれのペースでステージに入ってきて、楽器を構える。SEが徐々に小さくなって、代わりに彼らの音が響いた。パソコンの前でテレビの前で何度も見た景色が目の前に広がった。涙がこぼれた。目の前にUNISON SQUARE GARDENが生きていることが信じられなかった。3人が奏でる音が体を打った。腹の底から震えるような感覚。初めてだった。何より、生で聴く彼らの曲は最高にかっこよかった。何度も聴いた曲たちが目の前で演奏される。CDとは迫力が段違いだった。衝撃だった。何よりステージ上の3人がすごく楽しそうで、見ているだけでこちらも楽しくなった。この世にこれだけ楽しいことがあるのかと信じられなかった。あの日から私はライブの虜になった。
そこから私は更にUNISON SQUARE GARDENへのめり込んだ。発売されるシングル、アルバムは全て買った。リリースされる曲全てが大好きだった。入荷日に絶対手に入れたかったから、休み時間にわざわざタワーレコードに電話をかけて、CDが入荷されているか聴いてから買いに行っていたのを覚えている。ライブにもたくさん行った。シングルツアー、アルバムツアー、リリースイベント、対バンイベント、周年ライブ。行けるライブは全て行った。2日公演があれば当たり前のように2日間とも行った。よく親や友人に曲が一緒なら一日でいいんじゃないのと言われたが、同じセットリストでも日が違えば全く違うライブになる。大阪だけでなく、奈良、神戸、東京、果ては北海道までライブを見に行った。全てのUNISON SQUARE GARDENを目に焼き付けたかった。全てのライブが最高だった。
活動休止が発表された直後は、彼らのブログやインターネット記事を読んでも言葉が心の表面を滑っていくような感じがして、実感が沸かなかった。みんなして何言ってるの?みたいな。ぼんやりと日々を過ごすこと3週間。何となくUNISON SQUARE GARDENの曲を聴くことは避けていた。退勤後、いつも通りイヤホンを耳にはめ、プレイリストをランダムで再生した。サイダーが湧き上がってくるような高揚を音で感じた。to the CIDER ROADだった。その時、なぜかああ終わるんだと思った。もうこの曲を生で聴けることはないんだと。私の大好きなUNISON SQUARE GARDENは終わるんだと強く思ってしまって、涙が溢れた。好きな曲いっぱいあるよなとかあのライブの演出良かったよなとか心の底に沈めていた気持ちが一気に上がってきた。思っている以上にUNISON SQUARE GARDENのことが好きだったんだなと、その時初めて気づいた。道端で声を出して泣いた。
THE PINBALLSが活動休止すると知った時は、もっと取り乱した。やるせなさや怒りが湧いてきて、だけどどうしようもなくて、泣いてばかりだった。
THE PINBALLSのライブには2回しか行けなかった。うち1回は活動休止前のラストライブなので、実質1回しか行けてない。好きになってから発売された作品も3枚しかなかった。好きになってから過ごせた時間が短かった。何より、THE PINBALLSはもっともっとかっこよくなって知名度も上がると本気で信じていたから、悲しさと怒りが湧いたのだと思う。だが、UNISON SQUARE GARDENのライブには数え切れないほど行った。新曲が発表される嬉しさを何度も味わった。ツアーに行くたびに新しいファン層が増えていることを実感できた。新曲を聴きたい、ライブに行きたい。UNISON SQUARE GARDENに対してやりたいと思ったこと全てをできた。だから、後悔がない。むしろ、感謝している。
UNISON SQUARE GARDENに出会えたから、色々な場所に行けるようになった。UNISON SQUARE GARDENに出会えたから、9mm Parabellum Bulletに出会えた。フジファブリックに出会えた。THE PINBALLSに出会えた。ロックバンドを好きになれた。生きがいを見つけられた。あの日、シュガーソングとビターステップを再生していなかったら、TIGER & BUNNYを見ていなかったら、私は今生きてなかったかもしれない。どんな時もUNISON SQUARE GARDENが傍にあった。彼らのおかげで、楽しい時はさらに楽しくなった。辛い時は少しだけ前を向けた。突き放すようでいてずっと横にいるような温度感に救われた。UNISON SQUARE GARDENのおかげで、今の私がある。
情緒不安定である。UNISON SQUARE GARDENへの感謝はある。その気持ちに嘘はない。だが、同じくらい悲しいし受け入れられない。気持ちを文章にすれば少しは受け入れられるかと思って書いたのだが、全く受け入れられない。むしろ、涙が止まらなくなった。ロックバンドは永遠ではない。残念ながら、いつかは必ず終わる。だけど、この終わり方じゃなかったんじゃないかと思ってしまう。20周年ライブの田淵のMCを聴いた時、このままUNISON SQUARE GARDENは終わるのかなと正直思った。だが、新曲リリースのチラシも配られ、ライブも発表された。まだ続けてくれるんだと安心した。だが、活動休止は発表された。UNISON SQUARE GARDENは3人でやりたいことを全部やり尽くしたから終わりますと言って終わると思っていた。こんな仲違いみたいな終わり方になるなんて思ってなかった。もちろん、ファンに見えないところで話し合いを重ねて、3人とも悩み抜いて選んだ結論だとは理解している。だが、わがままだけど、こんな終わり方は嫌だった。まだ彼らの曲を聴けると思っていた。10枚目のアルバムがリリースされることを心待ちにしていた。ライブにも行けると思っていた。あの3人のUNISON SQUARE GARDENが好きだった。
UNISON SQUARE GARDENの新曲が聴けないこと、ライブに行けないこと、楽しそうに演奏する3人が見られないこと。全てが悲しい。これから何を楽しみに生きていけばいいか分からない。私が好きだったものは全て終わってしまった。THE PINBALLSが活動休止する時もこの世の終わりくらい悲しかったけど、あのときはUNISON SQUARE GARDENがいたから耐えられた。だが今は何もない。UNISON SQUARE GARDENの活動休止が発表された時から、7/16以降どうやって生きていこうとずっと考えてはいるが、何も思いつかない。じゃあ、人生を終わらせられるほどの勇気があるのかと言われれば、無い。きっとぼんやり生きてしまうのだろう。今後の人生でUNISON SQUARE GARDENより好きになれるものに出会えると思えない。いつか失われるくらいなら、最初から無いほうがいい。
まとまりのない文章だと自分でも思う。今の心情をそのまま書くとこうなってしまった。もうめちゃくちゃだ。ぼんやりと日々を過ごしていると、あっという間にライブ当日になってしまった。とんでもない人数の観客たちとぶら下げられている液晶を見ても最後のライブだという実感はわかない。あと数時間後にはすべて終わると分かっていても、まだ受け入れられないのであった。しばらくはUNISON SQUARE GARDENとの思い出に浸りながら、生きることにする。その後どうするかは、その時考える。