狂愛の果て

行き場を失った感情の掃き溜め

直球、王道、ストレート【MODE MOOD MODE SENTENCE】

summerday.hatenablog.com

本記事はナツ様主催の企画”MODE MOOD MODE SENTENCE”5日目の記事です。12人の文字書きが名盤『MODE MOOD MODE』を1曲ずつ読み解きます。是非とも他の参加者の方の記事もお読みになってください。素敵な企画に参加することができて嬉しかったです!お題に沿って記事を書くのは、とても楽しい。以下、本編。

 

 

 

 

 

はじめに

 『MODE MOOD MODE』とは、ロックバンドUNISON SQUARE GARDENが2018年に発売した彼らの7枚目のアルバムである。前作『Dr.Izzy』のロック&ポップの塩梅はそのままに、ユニゾンなりの変化球が加わった彼ららしいアルバムである。1番好きなアルバム、友達に布教するときにまず渡すアルバムとして『MODE MOOD MODE』をあげる人も多い。私もUNISON SQUARE GARDENで1番おすすめのアルバムはどれですか?と聞かれたら、『MODE MOOD MODE』をあげるだろう。

 

 これは本当にUNISON SQUARE GARDENらしさがギュウギュウに詰まった良いアルバムなのだ。『Dr.Izzy』も捨てがたいが、悩んだ末に『MODE MOOD MODE』をおすすめする。前作よりも洗練されたUNISON SQUARE GARDENを浴びることができるし、あとシングル4曲収録が純粋に強い。知っている曲が多いことは、ハマりたての人には良いとっかかりになる。先にシングルを何枚か貸して「UNISON SQUARE GARDENかっこよくね?」と思わせ、『MODE MOOD MODE』で「えっUNISON SQUARE GARDENってシングル以外も良いじゃん・・・」と沼に突き落とすのだ。

 

 そんな沼落ちスターターセットとして名高い『MODE MOOD MODE』の中で、今回スポットを当てるのがこちら。

Invisible Sensation」である。MMMシングル4強の一角。私がUNISON SQUARE GARDENの中で大好きな曲の一つだ。TOP3に入るかもしれない。しかしこの曲、UNISON SQUARE GARDENの楽曲の中でかなり異彩を放っているように感じる。そこでこの記事では「Invisible Sensation」の異質さについて書き散らし、MMMでの「Invisible Sensation」立ち位置についても少し書いて、「Invisible Sensation」の良さを存分に語ろうと思っている。前置きが長くなってしまったが、それではいってみよ~。

 

 

 

Invisible Sensation」の異質さ

 「Invisible Sensation」はUNISON SQUARE GARDENの12枚目のシングルで、アニメ『ボールルームへようこそ』の第2クールOPテーマ。カップリングは、「スノウループ」と「サンタクロースは渋滞中」。どうあがいても名盤。前作の10% roll, 10% romance」と同じアニメのタイアップだからか、雰囲気が似ている。

 

 曲調は、王道のユニゾンポップど真ん中。ギターがかっこよくて、ベースがうなってて、ドラムの手数が多い。うーん語彙力。音数の少ないAメロBメロからサビに向かって一気に駆け上がっていく疾走感はいつ聴いても鳥肌が立つ。それこそ踊っているかのような臨場感を感じさせる。ロックンロールとポップの良いところが混ざり合ったこれぞUNISON SQUARE GARDENといった曲調だ。あとやっぱり出サビは強い。

 

 曲調に関しては、違和感を感じさせる部分はほぼ無い。むしろいつも通りすぎるUNISON SQUARE GARDENだ。しかし、「Invisible Sensation」にはいつものUNISON SQUARE GARDENの曲には無い異質さ、際立っている点がある。もちろん良い意味で。その異質さの正体は、歌詞であると考えている。

 

 歌詞に意味なんて無い、聴き手次第ということを田淵智也は常々言っているが、そんなことはないよなとこの曲を聴いていて思う。以前も書いたが、ユニゾンの曲には伝えたいことがちゃんと込められているが、小難しい単語や意味の分からない文脈のつなげ方をしているせいで聴き手に伝わらないだけだと思うのだ。「ガリレオのショーケース」とか「フィクションフリーククライシス」とかどう頑張っても分かりかねないやつもあるんですけど。私の解釈レベルが足りていないだけかもしれない。

 

 だが、この曲は結構分かりやすい。ユニゾンっぽい歌詞の言い回しもあるけど総じて言いたいことは伝わってくるという、難解さと素直さのバランスがちょうど良い。

 

 しかし、分かりやすさだけで言うともっと強い曲がある。「黄昏インザスパイ」とか「きみはいい子」とか、「未完成デイジー」とか。『MODE MOOD MODE』に収録されている「君の瞳に恋してない」も分かりやすい部類だろう。

 では、何が「Invisible Sensation」を際立たせているのか?それは、歌詞のストレートな表現にあると思う。先ほどあげた曲達、ひいてはUNISON SQUARE GARDENのほとんどの曲に言えることだが、UNISON SQUARE GARDENの曲には「突き放すけど見捨てはしない」という表現が多い。

例えば、

もしも僕が君の前まで来て 何かできることがあるとしても

この手は差し出さない きっかけは与えたいけれど

それでも君が手を伸ばすのなら 何度でも伸ばし続けるのなら

その答え that is true, that is true 誰にも邪魔できないよ きっとね

上記は「さわれない歌」の一節である。私はUNISON SQUARE GARDENの全てがここに詰まってると本気で思ってる。これ最高すぎませんか???ユニゾン好きの多くはユニゾンのこのスタンスが好きで曲を聴いているんじゃないかと思うが、この突き放し加減が本当に良い。きっかけはこっちが与えるけど、それに気づいてモノにするのは全部あなた次第。といった姿勢が本当に好き。きっかけを励ましにするのも、慰めの言葉にするのも、自分を奮い立たせる力にするのも全部あなた次第。このある種突き放しているようでずっと傍に居る、この感じが多くの人を惹きつけるのではないだろうか。

 

 だが、「Invisible Sensation」はこれに当てはまらない。表現がストレートど真ん中ど直球なのだ。いつも通りのUNISON SQUARE GARDENには無いこのストレートさが「Invisible Sensation」を際立たせ、聴き手を惹きつける。だって曲始まりが、

高らかに 空気空気両手に掴んで 咲き誇れ美しい人よ

ですよ???ストレートすぎません??化粧品CMのタイアップ取れる。 

 

 何がここまで歌詞をストレートにさせたのか。それは結局「Invisible Sensation」を通して伝えたいことそのものがストレートな気持ちだったからだと私は思っている。素直に伝えたいことに回りくどさは必要ない。直球勝負あるのみ。勝負の世界の厳しさ、地道に努力を続けることの辛さ、行動することの大切さが歌詞を読むだけで伝わってくる。全てがストレートなこの曲の中でも極めつけにまっすぐな歌詞が、

どうしても消えないままの残酷時計は 真実を指してるから厳しくも見えるだろう

だけどいつか 誇れるくらいには 人生はよくできてる 

だから、生きてほしい!

これよ。こんな直球な歌詞、今まであっただろうか。UNISON SQUARE GARDENが「だから、生きてほしい!」って言った!?!?!?と当時腰を抜かしそうになったのをよく覚えている。ひねくれロックバンドの代表格と名高いUNISON SQUARE GARDENが「生きてほしい!」と言った。いくらでも遠回しに言えるこの言葉を、あえてそのままストレートに言った。普段突き放すような言葉ばかり並べているUNISON SQUARE GARDENが、ストレートに言葉を紡いだ。その事実が、「Invisible Sensation」を際立たせる。普段のあのスタンスがあるからこそ、より「Invisible Sensation」が輝く。UNISON SQUARE GARDENだからこそ、この歌詞をここまで響かせることができる。だから、「Invisible Sensation」が好きだ。「誠心粛々誠意の反復」とか「喧々粛々囂々の成果」とかユニゾンらしい表現も随所に散りばめられており一筋縄ではいかないところもあるけれど。それも含めて好きだ。

 

 

『MODE MOOD MODE』における「Invisible Sensation

 「Invisible Sensation」の異質さを存分に語ったところで、『MODE MOOD MODE』における「Invisible Sensation」の立ち位置を少し確認してみよう。

 

 癖のある「Own Civilization(nano-mile met)」で始まり、ユニゾン節が炸裂した「Dizzy Trickster」が盛り上げる。「オーケストラを観にいこう」で気持ちを明るくしたら、「fake town baby」でぶち上げる。「静謐甘美秋暮抒情」でぶち上がった気分に一息いれ、「Silent Libre Mirage」で徐々にテンポアップ、そして「MIDNIGHT JUNGLE」で大爆発。そのまま「フィクションフリーククライシス」がぐちゃぐちゃにかき回し、「Invisible Sensation」がいつものUNISON SQUARE GARDENを聴かせる。「夢が覚めたら(at that river)」でクールダウンし、「10%roll, 10%romance」でラストスパート、そして「君の瞳に恋してない」で大団円。

 

 『MODE MOOD MODE』の流れを私なりにざっと見てみたが、「Invisible Sensation」は良い位置にいる。前曲が「フィクションフリーククライシス」というUNISON SQUARE GARDEN史上最も歌詞の意味が分からない曲だからこそ、表現がストレートなこの曲がより印象深く刺さるのだろう。曲調も王道のユニゾンポップなので、聴き手も安心して盛り上がれるのではないだろうか。そこから「夢が覚めたら(at that river)」で気分を落ち着ける。

 「夢が覚めたら(at that river)」は現実のどうしようもなさを歌っている曲だと思っているのだが、それがより鮮明に伝わるのは、「Invisible Sensation」がストレートに現実の厳しいけれど目に見えない感覚を頼りに生きてほしいと歌っているからではないだろうか。「努力だけじゃ未来は保てない」の一言が曲となって立ち現れてきたのが「夢が覚めたら(at that river)」ではないかと思っている。

 アルバムの流れを確認して改めて思ったが、曲順当てクイズ絶対無理ゲーだったのでは?

 

 

終わりに

 「Invisible Sensation」を初めて聴いたとき、言いようのない高揚感を覚えた。「だから、生きてほしい!」のワンフレーズに衝撃を受けて、切り文字にまでした。ラジオのタイムフリーで何度も聴き、CD発売日まで待ちきれなかったことを良く覚えている。一見真緑にしか見えないジャケットを傾けると絵柄が浮かんでくるといった今までにない工夫も凝らされていて、非常にワクワクした。MVはまあ色々言われているが、私はあのMV結構好きである。

 『MODE MOOD MODE』に収録された「Invisible Sensation」は、シングルの時とは違った魅力を備えていた。アルバムという1つの流れの中に置くことで、その曲自身の魅力も増幅し他の曲の魅力も引き出せる。そして、『MODE MOOD MODE』に収録されたからこそ「Invisible Sensation」の異質さはより際だったのではないかと思う。

 

 わからずやには見えない魔法に魅せられてもう5年。『MODE MOOD MODE』5周年おめでとうございます。

 

 まとめ記事はこちらから

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